☆ ★ ☆ 映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。
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Vol.752「サラエボの花」★★★★ 2007.12.8(土)
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【1】STORY
一人娘と二人暮らしの女は、娘の修学旅行代を払うために、
仕事と金策に明け暮れる。娘は次第に家庭に居づらくなり…。
【2】Michelin
岩波ホールでの単館上映。週末はそれなりに混んでいる。
【3】Review
戦争が心に残した傷跡を巧みに描き、全編を通し胸が詰まる。
【4】Column
戦争は秘密を作り出し、平和な生活に壁を作ってしまう。
___________________________________________________Grbavica
昨年のベルリン金熊賞を獲得した旧ユーゴスラヴィアの映画。
サラエボと言えば、多くの監督が戦争映画の舞台にしましたが、
今回は、現地のボスニア人の手によって作られているもの。
戦争そのものよりも、現地の人に大切なのは現在ですよね。
<オフィシャルサイト>
http://www.saraebono-hana.com/
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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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一人娘と二人で暮らす女は、愛する娘の修学旅行代を払うために、
夜の仕事に就き、逢う人に次々と金策を図る。困憊する母を見て、
娘も反抗的になっていくが、父親が戦死者の場合は旅行代が免除
されると聞く。しかし、母は戦史証明書をずっと示そうとしない。
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┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
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岩波ホールでの単館上映です。
いつのまにか、座布団がついてました。
ここはスクリーンがとても奥で、小さいです。
2−3列目でも、筆者はちょうどいいくらい。
段差も少ないので、前に大きな人が座ると、
とても見づらいことになるので、ご注意を。
逆に、空いているときであれば、
後ろに人がいない席に座るように心がけて頂きたく。
週末はそれなりに混んでいましたが、
来年には空くのではないでしょうか。
平日なら、大丈夫だと思います。
http://www.iwanami-hall.com/
▼神保町 岩波ホール
11:30/14:30/18:30〜20:05(終)
※土日祝は18:30の回を17:30に繰り上げ
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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
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【ポイント】★★★★
<内訳>
テーマ :★★★★★
ストーリー :★★★
キャスト :★★★★
スタッフ :★★★★
>テーマ ★★★★★<
戦争が終わってからの悲劇と絶望をテーマに、愛する娘のために
必死で生きる母親の姿が、最後まで通して、胸を締めつける。
>ストーリー ★★★<
半分ほどしても、いささか展開しない状況に苛立っては来るが、
その絶望こそ真実なのかも。ラストはもう少し詳しくても??
>キャスト ★★★★<
悲劇的な過去を抱えながら、懸命に生きる母親の姿が胸に迫る。
つらい記憶を堪える様子も、金策の失敗も、同情を禁じえない。
>スタッフ ★★★★<
最後まで、ほとんど横道にそれずに母子の姿を丹念に見つめ、
お互いの心境を余すところなく描ききった演出は、堅実である。
>総評 ★★★★<
戦争の傷跡を、再び切り開いてみせる人間ドラマです。
内容的には、私生児をめぐる母の秘密という意味で、
ボスニア版の「秘密と嘘」ですが、その事実を作ったのが、
戦争だという点が、リアリティと恐怖感を増しています。
また、懸命に生きる母親にスポットを当てており、
女性として、過去に絶望と苦悩を抱えながらも、
人生を捨てられない女性の強い決意が、ひしひしと伝わる。
おかげで全編を通して、胸が押しつぶされそうなほど、
苦しく、暗い映画ですが、見ごたえがあるのも事実です。
元気なときに、行くことをオススメします。
涙もろい人は、号泣必死。
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┃4┃ Column (観おとわったあなたへ)
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戦争は、ただ人々を殺すだけではない。
生き残った多くの人々に対しても、
人生のなかに、「秘密」を作り出すものだ。
誰にも伝えたくない、
自分でも思い出したくない、
哀しい過去が、人々の心に突き刺さる。
普通に生きていれば、忘れてしまうが、
ふとした拍子に、この秘密は震えだし、
心に刺さったその棘の存在を思い出させる。
普段は、気の良い母親として生きていても。
ちょっとした他人の振るまい、他人の匂い。
着ている服や、態度が、忌まわしい記憶を呼び戻す。
戦争の時に受けた、悲惨な傷跡。
彼女は、もはや女としての自分を捨てた。
そして、捨てなければならなかったのだ。
もう自分は、二度と男を愛することはない。
例え、自分を愛する男がいたとしても、
私は、異性と恋に落ちることはできないのだ。
その分、すべての愛を、残された娘に注ごう。
自らの秘密を隠したまま、彼女は娘を愛する。
たった1人の愛する者のためなら、金策も、
忌まわしい記憶も、疲れも、乗り越えていけるのだ。
しかし、どんなに秘密にしていても。
どんなに明るく振る舞ったとしても。
身近にいる人は、秘密に気づくものである。
家族であれば、なおさらである。
娘でれば、母の苦労に気づいている。
母がどれだけ金策で苦労し、疲れているか。
母がどれだけ仕事をして、苦しんでいるか。
母がそれでも家事をして、自分を助けてくれているか。
分かっている。分かっているからこそ、
そういうときに、家にいるのは心苦しいものだ。
母を苦しめているのは、他ならぬ自分なのだ。
どうしてその場で、明るく振る舞うことができよう?
道を外れていく彼女は、秘密に気づいていた。
母は自分に、何かを隠して生きているのだ。
父親は誰なのか。どうして何も言わないのか。
それは、私の父に関する話でもあるのに!
戦争の傷跡は、誰にも話せない秘密として残る。
それは、親子だからこそ、話せないものにもなる。
そして、親子だからこそ、乗り越えなければならなくなる。
いったい、どれだけ多くの人々が、
その傷跡に、これまで直面しただろうか。
紛争が止んで10年。街は復興したかもしれない。
しかし、人々の心の傷跡は今も癒えていない。
サッカーの記事を読んでいると、前代表監督への質問で、
何度も旧ユーゴに関する因縁に対して、記者から質問がある。
そのたびに、オシム氏はかわしてきた。
「私は生き残った。それだけのことだ」
彼もまた、秘密を抱えていまも生きているのだ。
オシム氏も含め、サラエボの全ての人々のご回復を祈るばかりだ。
2007/12/8 岩波ホールにて。
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┃5┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。
★次回予告「ある愛の風景」…………………………………………
今月の注目作は、「しあわせな孤独」「アフターウェディング」
と完璧な映画作りをしてきたスサンネ・ビア監督の新作です。
最も、「アフターウェディング」の前に作られたこの映画は、
いよいよ3連続で5つ星をとれるかどうかの、快挙に挑みます。
で、次回もお楽しみに。次回は来週月曜の予定。
http://aruai.com/
なお、次々回予定の「エンジェル」の出来次第では、
差し替えの予定がありますので、ご了承下さい。
★今後の予定など………………………………………………………
さて、来週のもう1本は、全編英語で原作物に挑戦する、
フランソワ・オゾン監督の新作「エンジェル」。
果たして、英語にしても彼の厳しい眼差しは活きるのかな?
http://angel-movie.jp/
以降は、とりあえず以下の5本を予定。
「モンスーン・ウェディング」のミラ・ナイール監督が、
アメリカを舞台にした家族ドラマ「その名にちなんで」。
そしてカンヌの審査員賞を受賞したフランスアニメ、
「ペルセポリス」など、小粒な話題作が多いです。
ハリウッドの年末大作は「アイアムレジェンド」ですね。
これって「28日後…」と同じですよね?違うの?
よく分からないんだよね、最近のハリウッド映画って、
オリジナルなのか、リヴァイヴァルなのか、何なのかも…。
「マリア」http://www.maryandjoseph.jp/
「ペルセポリス」http://persepolis-movie.jp/
「その名にちなんで」http://movies.foxjapan.com/sononani-chinande/
「アイアムレジェンド」http://www.iamlegend.jp/
「迷子の警察音楽隊」http://www.maigo-band.jp/
というわけで、これからもお楽しみに。
★最新情報はブログにて!!…………………………………………
ブログには過去掲載作などがまとめて載っています。
http://filmandlife.seesaa.net/
※ 実はケータイからも同じアドレスでみられます。要Check!
ブログなら、かしこまったメールをすることもなく、
小さなコメントや、筆者へのリクエストを書き込めます。
また、筆者が映画を見終わった直後の感想や、休刊情報、
映画とは全く関係ない筆者の近況まで、いろいろ掲載中。
ぜひぜひアクセスしてください!!
★これまでのバックナンバー…………………………………………
バックナンバー、メルマガの紹介や登録関係などについては、
それぞれ以下のページをご参照くださいませ。
http://www.mag2.com/m/0000197069.html(まぐまぐ)
http://www.melma.com/backnumber_33635/(メルマ)
メルマのバックナンバーは、第1号から掲載されています。
ただし検索機能がついておりませんので、
ここ2年については、ブログの方が探しやすいと思います。
http://filmandlife.seesaa.net/(筆者のブログ)
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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
Vol.752 2007年12月8日
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