☆ ★ ☆ 映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。
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Vol.574「初恋」★★★★ 2006.6.16(金)
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【1】STORY
60年代の東京。身寄りのない女子高生が、たまり場に集い、
権力に刃向かう若者たちのなかで、ある男に惹かれ…。
【2】Michelin
シネカノン有楽町ほか。今週末くらいは混んでいるかも。
【3】Review
宮崎あおいだけで、刺々しい純愛物語を体現してしまう。
【4】Column
その頃、権力との力比べで、若者は自分を知ることができた。
_________________________________________________First Love
朝の連ドラでも、快活な笑顔と素朴な涙を振りまいている、
宮崎あおい。この映画の舞台も、同じく昭和史を振り返るもの。
三億円事件を題材に、権力に刃向かうことが青春だった時代を、
ノスタルジックに振り返っていくシリアスなラブロマンス。
<オフィシャルサイト>
http://www.hatsu-koi.jp/
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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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60年代、学生運動華やかなりし東京。内気で孤独な女子高生が、
若者たちのたまり場に紛れ込み、権力への抵抗を肌で感じていく。
そのなかでも、いつも優しく接してくれていた秀才肌の男が、
ある日彼女を誘い、飛んでもない「計画」を打ち明けてきた…。
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┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
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シネカノン有楽町ほか、渋谷、新宿あたりでやってます。
平日でも半分ほどは入っていたので、週末は混むかもしれません。
さすが、朝の顔に選ばれただけあって、知名度は高いのかな?
▼有楽町 シネカノン有楽町 6/10(土)より
10:40/13:20/16:00/18:40〜終20:50
▼渋谷 シネマGAGA! 6/10(土)より
10:30/13:00/15:30/18:00/20:30〜終22:45
▼豊島園 ユナイテッド・シネマとしまえん 6/10(土)より
〜6/16 9:45/14:45/19:45〜終21:49
▼東武練馬 ワーナー・マイカル・シネマズ板橋 6/10(土)より
〜6/16 10:40/13:05/18:20/20:45〜〔終〕22:55
▼新宿 新宿武蔵野館 6/10(土)より
11:00/13:30/16:00/18:30/21:00〜終23:10
※時間変更の可能性あり。
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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
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【ポイント】★★★★
<内訳>
テーマ :★★★★
ストーリー :★★
キャスト :★★★★★
スタッフ :★★
これは、宮崎あおいの映画だと思います。
てゆうか、彼女がいなかったら、出来は散々。
この映画は、本当は群像劇だったのだと思います。
60年代、たまり場に集まったアウトサイダーたちが、
「権力」を前に行動し、また離散していく青春活劇。
ところがこの部分は、ほとんどおざなりにされ、
何で主人公の兄が出るのか、キャラ紹介があるのか、
むしろ疑問に思えるくらい、どのエピソードも中途半端。
後半になると、そんなこと忘れてしまうかのように、
三億円事件を中心に、主人公の物語一辺倒。
おや?あの人たち、いったいどうなっちゃったの?
このエピローグ、いまさら付け足されても、ねえ。
きっと長い原作を、適当につまんだんだろうな…。
でも、そんなことはどうでもいいんです。
中途半端な脚本やプロットは、簡単に吹っ飛ばすくらい、
宮崎あおいの存在ひとつで、物語になってしまうんですから。
主人公の素性はほとんど語られないにもかかわらず、
彼女が「ずっと寂しかった」というだけで想像がつく。
別れの場面でも、彼女がそっと手を差しのべるだけで、
観客の涙をグッと誘ってしまう。何の伏線もなく!
世の中には、こういう「飛び道具」のような役者がいますが、
彼女は21歳にして、その域に到達しつつあるようです。
かわいいとか、表情がいいとか、もはやそんなレベルを超えて、
スクリーンの彼女は、物語そのものを体現する存在感がある。
かくして、この映画はれっきとした純愛映画になりました。
それも、胸に小さな棘が突き刺さる、切ない初恋の物語です。
交際相手と死に別れることが純愛だと勘違いされつつあるいま、
お涙頂戴ではなく、寂しさに胸が押しつぶされるような恋愛映画。
久しぶりに、心の琴線を揺り動かすようなテーマと、
テレビにはない、宮崎あおいの実力を知ってほしくて、
映画全体の出来と関係なく、あえて★4つをつけます。
元ちとせのテーマソングもまた、しっくり響いて印象的。
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┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
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60年代。若者たちが権力に抵抗した時代。
それは、ノスタルジーに包まれて映る世界。
柴田翔の「されど我らが日々」、小池真理子の「恋」。
生まれてもいない時代に、私はいつも郷愁を感じる。
この映画の舞台もまた、そのノスタルジーのなかだ。
新宿のジャズバーにたまる「抵抗者」たち。
角材を持ち、気勢を上げ、警官に石を投げ、
逮捕されても、リンチされても、立ち上がる人々。
けれども、何も変わらなかった。
催涙弾が、放水が、火炎瓶が飛び交ったところで、
辺り一面が壊れるだけで、社会は決して壊れなかった。
目的を果たせないまま、彼らはちりぢりになる。
ジャズバーはつぶれ、仲間たちは皆、どこかへ消えた。
抵抗を諦め、権力に屈し、世界の片隅へと自分を消した。
目的を見失った若者たち。
一方で彼らは、自分自身を見つける。
たった1人で、世界を変えることはできない。
たった1人で、自分たちは生きることもできない。
権力に立ち向かった彼らは、己の弱さを思い知っただろう。
何も自分だけではない。誰もが小さく、弱い存在だった。
権力が用意した居場所を拒み、地下にたまり場を求め、
誰にも当てはめられない自分を、誰もが探していたのだ。
主人公の女子高生は、そんな人々が好きだった。
彼らといつまでも、手を取りあっていたかった。
最後まで諦めずに、権力に食らいついた三億円事件。
成功しなくても良かった。参加できると言うだけで。
彼らの仲間として認められるだけで、彼女は充分だった。
自分は小さいけれど、1人ではない。
漠然とした権力という存在と力くらべをして、
自分と仲間の存在を確かめられた60年代。
そこに、素朴なノスタルジーを感じる。
いまや教育は、自由と個性を尊重している。
権力は、右へならえなんて決して言わない。
その代わり、好きに生きろ、ただし自分で責任をとれ、と。
自由という名の世界に、たった1人で放り出され、
自分と身近な誰かを較べる機会さえ見つけられず、
ただ、テレビのなかの理想型ばかりを気にして、
確かめる前から、自分の力を見かぎってしまう不条理。
漠然とした権力は、漠然とした自由に代わり、
孤独を知らない孤独のなかで、いまや手を取りあって、
人々が何かに抵抗することすら許されない。
そんな現代を振り返れば、60年代はノスタルジーだ。
それはもう、決して出逢うことのない、初恋の相手のように。
2006/6/13 シネカノン有楽町にて。
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┃5┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。
★次回予告「カサノバ」………………………………………………
ラッセ・ハルストレム監督の新作は、ファンタジックなラブコメ。
ヒース・レジャーがオスカーにノミネートされたゲイ役から一転、
稀代の色男として、あらゆる女を口説くことに成功していきます。
しかし彼にもいつかは、自由にならない女が現れるわけで…。
で、次回もお楽しみに。次回は来週月曜の予定。
http://www.movies.co.jp/casanova/
★今後の予定など………………………………………………………
今月の残りは、以下の3本を予定。
個人的に楽しみにしているのは「プルートで朝食を」。
「28日後…」のキリアン・マーフィが、ゲイの主人公として、
完璧な女装をこなし、ロマンティックなラブストーリーに…。
彼はいい役者になると思うんですけどねえ。
「ステイ」http://www.foxjapan.com/movies/stay/
「やわらかい生活」http://www.yawarakai-seikatsu.com/
「プルートで朝食を」http://www.elephant-picture.jp/pluto/
というわけで、これからもお楽しみに。
★最新情報はブログにて!!…………………………………………
ブログには過去掲載作などがまとめて載っています。
http://filmandlife.seesaa.net/
※ 実はケータイからも同じアドレスでみられます。要Check!
ブログなら、かしこまったメールをすることもなく、
小さなコメントや、筆者へのリクエストを書き込めます。
また、筆者が映画を見終わった直後の感想や、休刊情報、
映画とは全く関係ない筆者の近況まで、いろいろ掲載中。
ぜひぜひアクセスしてください!!
★これまでのバックナンバー…………………………………………
バックナンバー、メルマガの紹介や登録関係などについては、
それぞれ以下のページをご参照くださいませ。
http://www.mag2.com/m/0000197069.html(まぐまぐ)
http://www.melma.com/backnumber_33635/(メルマ)
メルマのバックナンバーは、第1号から掲載されています。
ただし検索機能がついておりませんので、
ここ1年については、ブログの方が探しやすいと思います。
http://filmandlife.seesaa.net/(筆者のブログ)
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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
Vol.574 2006年6月16日
発行者:Ak. http://filmandlife.seesaa.net/
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