☆ ★ ☆ 映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ ★
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。
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Vol.539「うつせみ」★★★★ 2006.3.13(月)
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【1】STORY
空き巣狙いの若者が忍び込んだ家に、居合わせた若妻。
ふたりはなぜか息が合い、やがて逃避行がはじまる…。
【2】Michelin
恵比寿ガーデンシネマでの単館上映。やや混んでます。
【3】Review
セリフを省き、演出と映像美が織りなす美学は圧巻!
【4】Column
人間を幸せにするのは、決して目に見えるものではない。
_____________________________________________________3-iron
前作「サマリア」で、これまでの集大成を5つ★に昇華させた、
韓国の異端児、キム・キドク監督。新作は今回も引き続いて、
聖書を念頭に置いた哲学的なテーマでありながら切り口は一変、
シンプルな物語と美しい映像に、超現実的な演出が輝きます。
一昨年のヴェネツィア国際映画祭では、監督賞他を受賞。
<オフィシャルサイト>
http://utsusemi-movie.com/
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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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空き巣狙いの若者が忍び込んだ家に、たまたま居合わせた若妻。
彼女は若者の様子を窺いながら、その清廉な様子に心惹かれる。
二人は彼女の夫の暴力から逃れ、留守宅を転々と逃げていく。
写真家、ボクサー、お年寄り、さまざまな家に想い出を残し…。
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┃2┃ 上映館ミシュラン (観ていないあなたへ)
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恵比寿ガーデンシネマでの単館上映です。
筆者は平日に行ったので、やや混み程度でしたが、
週末はそれなりに混んでいるようですね。
客層は、最近の韓流ブームを反映した方々ばかり…。
キム・ギドク監督の作風が彼らに受け入れられたのか?
ちょっと最後まで、分かりませんでしたが…。
▼恵比寿ガーデンシネマ
11:15 13:15 15:15 17:15 19:15
混雑状況や定員入替などについては、以下を参照下さい。
http://www.gardencinema.jp/yebisu/movie/10156/
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┃3┃ Review (観ていないあなたへ)
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【ポイント】★★★★
<内訳>
テーマ :★★★★★
ストーリー :★★★★
キャスト :★★★★
スタッフ :★★★★★
素晴らしい映画だと思います。
「サマリア」を集大成に仕上げたキム・ギドクが、
次回作で新たな展開、方向性を示すことができるのか、
楽しみでもあり、心配もしていましたが、杞憂に終わりました。
着想は今回も、どうやら聖書をベースにしているようです。
キム・ギドクは神学校にも通っていた、熱心なクリスチャンらしく、
マリア像にボールを打ち込む冒頭からも、テーマは明らかです。
前回は、アウトローな生き方しかできない人々に訪れる救い、
そういう意味で、「サマリア」が選ばれましたが、
今回は、もっと聖書の具体的メッセージが込められます。
>「目の見えない者が見えるようになり、見える者が盲目となる」<
この言葉と解釈を知っておくと、後半は分かりやすいでしょう。
もちろん、知らなくても大丈夫ではありますが。
見えない者が見える。見えるはずの者が見えない。
もともと、留守宅を忍び歩いていた若者は、
普段は見えない存在で、知らない間に家を直してしまう。
大切なモノは目の前の分かりやすいところにあるのに、
多くの人々はそれを分かろうとせず、手放してしまう。
一方で、見えない存在の若者と、彼を追いかける若妻だけが、
見えるところにある大切なモノや、瞬間を追いかけていく。
この設定は、なかなか上手くはまっているし、
ラストのキスシーンは、「悪い男」と同じように、
キム・ギドクの示す愛のかたちなのであって、
まるで、「悪い男」のキスシーンからはじまった映画が、
ここに結実したかのような、深い感慨すら覚えました。
一方で、前半の留守宅生活はその前振りであり、
後半とはあまり、うまくかみ合っていなかったかなあ。
突然、若者が奇妙な術を手に入れてしまったのは…。
まあ、それは映画だから許されているんですがね。
「春夏秋冬…」から積み重ねてきた映像美も健在。
そして、観る人を飽きさせないユーモアたっぷりの展開。
セリフが何ひとつないのに、物語を巧みに紡ぎ出した、
主演2人の演技は「天使の涙」の金城武も彷彿とさせる。
何か、見事な映画を簡単に創りあげてしまった気がする。
その簡単さこそ、キム・ギドクが新たに示した新境地。
「サマリア」までの、さまざまな設定やアウトローの、
具体的な生き様を省略して、テーマに徹底してきたことで、
彼の映画はさらに、天使の羽根を蓄えたのでは?傑作。
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┃4┃ Column (観おわったあなたへ)
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昔、祖父母が住んでいた青森の家は、
古いながらも、だだっ広い2階建ての家だった。
1階にも数部屋、2階にも数部屋の部屋があり、
合わせて2部屋の狭い東京の家に住んでいた私には、
そこはまるで、小さなジャングルだった。
だから、さまざまなものが気になった。
埃をかぶって壊れたままの洗濯機、古いマンガ、
見慣れない神棚、黒ずんだ衣装箪笥、などなど…。
その家を知らない人間が入ると、
「こうであればいいのにな」と気づくことが多い。
青森の家も、そんな類の家だった。
この映画の若者が、次々と訪れる留守宅のように。
知らない間に壊れている時計。
直そうと思って、ずっとそのままのCDコンポ。
針が10kg進んだままの体重計。
彼は、そっと直していく。
そして、洗濯物を干して、
また知らぬ間に、次の家へと消える。
見えないところで、彼は家を直している。
けれども多くの人は、留守中に誰かがいると、
犯罪者だと決めつけて、追い出してしまう。
ボクサーに殴られても。
警察に捕まっても。
彼は留守宅で、そっと壊れ物を直すことしかできない。
だって、彼の怒りはあまりにも強すぎる。
目の前のものを大切にしない、人々の強欲と、
その身勝手さに、彼は3番アイアンを振るう。
ヒモでくくりつけ、網で守らないかぎり、
彼の撃つゴルフボールは、誰かを殺めかねない。
どうして、人は目に映るものにばかり、
目を奪われてしまうのか?
カネと権力があっても、妻を幸せにはできない。
肉体を鍛えても、人を幸せにはできない。
プロの写真家でも、被写体はチグハグにしか写らない。
そんな単純なことに、どうして誰もが気づかないのか?
もしもこの身体が、目の前にあるということが、
あなたの愛する気持ちをゆがめてしまうなら。
いっそ、この世界から姿もかたちも消してしまおうか?
そのとき、あなたは気づくだろうか。
人を幸せにするのは、目に見える存在ではないことに。
私があなたのことを、心から愛していたことに。
そして、誰にも見えないいまでも、あなたのそばにいることに。
2006/3/8 恵比寿ガーデンシネマにて。
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┃5┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。
★次回予告「ヘイズ」…………………………………………………
前作「ヴィタール」では、さらに肉体の内部へと下りてきた、
日本が誇る塚本晋也監督。新作ではさらに肉体を切り、裁き、
グロテスクな恐怖映画の中編を製作。全編デジタル作品という、
初めての試みについても、塚本の独創性が試されると思います。
で、次回もお楽しみに。次回は火曜。
http://theres.co.jp/tsukamoto/haze/
★今後の予定など………………………………………………………
来週のあと2本は、荻上直子の「かもめ食堂」と、
ジョージ・クルーニーが助演男優賞を獲得した「シリアナ」の予定。
今月は例によって、他の原稿の〆切もあるため、
再来週からは2本ずつになります…。
すみませんがよろしくお願いいたします。
・「かもめ食堂」http://www.kamome-movie.com/
・「シリアナ」http://www.syriana.jp/
・「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」http://3maisou.com/
・「ヒストリーオブバイオレンス」http://www.hov.jp/
・「ウォレスとグルミット」http://www.wandg.jp/
・「ククーシュカ」http://www.kukushka.jp/
★最新情報はブログにて!!…………………………………………
ブログには過去掲載作などがまとめて載っています。
http://filmandlife.seesaa.net/
※ 実はケータイからも同じアドレスでみられます。要Check!
ブログなら、かしこまったメールをすることもなく、
小さなコメントや、筆者へのリクエストを書き込めます。
また、筆者が映画を見終わった直後の感想や、休刊情報、
映画とは全く関係ない筆者の近況まで、いろいろ掲載中。
ぜひぜひアクセスしてください!!
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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
Vol.539 2006年3月12日
発行者:Ak. http://filmandlife.seesaa.net/
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